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Only on the iPhone@Hachioji
家電量販店に販促用として設置されているiPhoneの中には、見ず知らずの誰かが撮影した写真が消去されないまま保存されていることがある。無責任にiPhone に残されている撮影者不明の写真には、Exif 情報として緯度経度や撮影された日時などが記録されているが誰が撮影したのかという撮影者の情報だけは記録されることなく、するりと抜け落ちている。 しかしその写真の中にはしばしば iPhone のカメラ機能(パノラマ撮影等)の失敗や、撮影者の指の 映り込みという人為的なエラーから撮影者という人間の面影を匂わせるものが残されている。 そこに染み付く撮影者の残り香のようなものは、かつて存在したはずの撮影者の存在や身体性を思い起こさせる。
本作では、iPhoneに搭載されているairdropという機能を使用することで販促用iPhoneの中に残っている写真を、 作者のiPhoneに転送し収集した上で、印刷し展示している。 また、場所性を担保すべく展示会場に近い八王子駅周辺の家電量販店に絞り収集を行っている。大判印刷された撮影者の人差し指やフォーカスのあっていない撮影者不明の写真は、まるで駅などに大きく張り出されるiPhoneで撮影された無味無臭の写真広告へのアイロニーのように、誰かの手によって撮影された撮影者不明写真に付随する人間臭さを誇張して表現するのと同時に、販促用iPhoneで撮影された撮影者不明の写真というデジタル写真におけるファウンドフォトの新たな文脈の更新を図る。
撮影:須田行紀