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キャッチアンドリリース
2020年度多摩美術大学卒業制作優秀作品に選出
本作ではインターネット上に放流され次々と繁殖するミーム動画を素材とした映像作品を制作し、複数の液晶ディスプレイに映し構成している。 そこに映る映像作品は単なる映像ではなく、液晶ディスプレイの画面がアクリル板やガラスのように物理的な存在として扱われるような構成になっており、 スマートフォンの流通によって芽生えた「画面は水面のような境界面として機能し、触れることのできるもの」という鑑賞者の思考を増幅させる。 ディスプレイの画面を水面のような境界として扱い、ダウンロードアップロードという一連の行為を釣りにおいてのキャッチアンドリリースに見立てることによって、 そこにミーム動画による一つの生態系のサイクルが存在するように見える。 ディスプレイの画面を通して生まれる生態サイクルを観測することにより、 日々スマートフォンやタブレットといった液晶ディスプレイの中に広がる広大な世界を覗く私たちの眼差しの先を探求する。
本作ではインターネット上に放流され次々と繁殖するミーム動画を素材とした映像作品を制作し、複数の液晶ディスプレイに映し構成している。 ミーム映像というものは、いつの間に生まれ、あっという間に様々なユーザーの目に止まり、編集され再度インターネットの海に戻された後、物凄い速さで増殖していく。 本作品でも、映像作品に使用するため画面越しに釣り上げられて(ダウンロードされ)素材とされていたミーム映像は、 作者の手によって再度編集された後YouTubeにアップロードされることによってインターネットの海に再度戻っていく。
現代の私たちの生活にはスマートフォンやタブレットなど、インターネットに接続された様々な大きさの液晶ディスプレイが溢れている。 本作内の映像作品は我々にディスプレイの画面という透明な板の存在を気づかせる。 透明な画面はインターネットに接続されたiPhoneなどにおいて、インターネットと現実を分ける障壁のように機能する。 本作ではミーム映像というものをモチーフにそれらがディスプレイの画面越しにダウンロード、アップロードされるという一連の行為を、 釣りにおけるキャッチアンドリリースという水面を介して水中と水の外を行き来する行為に見立てることで、 そこに生まれる生態系のサイクル、またそのサイクルの間に立ち上がってくる水面のようなディスプレイの画面を認識させることによって、 私たちの眼差しの先に存在するインターネットとフィジカルの関係性と、それら両間を司どる液晶ディスプレイの画面の存在について考える。

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